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熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き

ジョン・マリー

もと、国境なき医師団で働いていたという経歴を持つジョン・マリーのデビュー作。
書評等では、医学の面が強調されているところもありますが、自らの人生と医師としての経験を通じてとらえた人に対する愛情にあふれ、単なる作り物ではない奥深さを感じさせます。
読み終わってもその愛情が何によるものかうまく言い表せませんが、物としてのはかない命を知っているからこそわかる、生身の人間の愛おしさ、せつなさ、空しさのようなものなのかもしれません。

うわべのドライな表現とは異なり、心のひだにまとわりついているような人生の機微がみごとに描かれています。
先日読んだ「地図に仕える者たち」も生物学や地質学などの理系視点からの小説でしたが、こちらは医学をベースに持ちつつも、完全に物語の背景のひとつとして消化されています。
そんなことより、いろいろな人生の苦難と喜び、葛藤などをこれほどに密度の濃い短編として濃縮してみせる力に驚かされます。
長い人生をある一点に結んでみせる力がすばらしいと思います。
作品それぞれが、過去において目をそむけ、逃れてきたものに焦点を当てています。
そこに描かれるのは、破壊を受容することであり再生していく姿。

小説で書きたいがためにライターズ・ワークショップで学んだというあたりに、ほんのちょっとぎこちなさを感じなくもないですが、初めての作品にして短編の名手と言わしめるだけの完成度を持った作品に仕上がっています。
マクラウドなどと比べるのもちょっと酷かもしれませんが、それでも十分に伍している感すらあります。
これからの作品への期待も大きくなるばかり。
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2005.03.06 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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