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茂木 健一郎

人間の意識について書かれている本です。それを「仮想」という言葉にしたところが、この本のすべてでしょうか。科学万能といえないことがたくさんあり、それらの統計心理だけでとらえきれないものに目を向けようという趣旨。人間の経験のうち、計量できないものを、「クオリア(感覚質)というのだそうですが、それについてわかりやすく説明がされています。
仮想は、脳の中にありながら脳の中に限定されず、無限に放たれる志向性によりもたらされ、志向性が束になることで空間ができ、志向性が配列されると時間になる。その対極に、「今、ここ」という「局所的因果律」を重視した経験主義科学がある。現実感を支ええているのが視覚や触覚などの情報が一致したもので、一致しないものが仮想ということにもなる。私たちの精神は、このふたつの世界にまたがっているという論旨です。
物質として確かに存在する現実と、この世界のどこにも存在しない仮想を区別することが、生物としての人間の生存要件のうちもっともクリティカルなものであるというところは、人間のおもしろさを言いえて妙です。さらにおもしろい話は、意識の中に現れるのは、現実そのものではなく現実の写しであるというくだり。したがって、現実自体を決して知りえないというのだから困ったものです。現実さえも自分の脳の中に複製されているとは、なんとわくわくする話でしょう。これは哲学と科学の中間にあるような魅惑的な世界感です。
バーチャルという言葉がありますが、それをすごく興味深く説いてくれる本ですね。脳科学から説明されるヴァーチャルはとても奥深いものです。なにからなにまで脳内現象になってしまいそうなこの世界観は下手なSFよりもはるかにおもしろいですね。平易に書かれていますが、それがこの本のすごいところでもあると思います。見ようによっては、当たり前のことを言っているようですが、それを最新脳科学から語られているところに少なからず興奮を覚えました。

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そもそも、人間にとって、自分の意識がある、ということほど確実なことはないはずである。物質的世界こそ確実だ、という近代科学の世界観は、おそらくは公共的倒錯とでもいう奇妙なねじ曲がりの上に成り立っている。現実の世界がないというわけではない。現実は、きっとある。しかし、現実自体は知りえない。私たちが把握できるのは、意識の中の現実の写しだけである。だとしたら、この世で確実なのは、現実の世界ではなく、意識をもった自分だけではないのか。近代合理主義の始祖、デカルトの立場は、まさにそのようなものであった。
ほんの少しでも疑いをかけうるものは全部、絶対的に誤りとして廃棄すべきであり、その後で、わたしの信念のなかにまったくない何かが残るかどうかを見きわめねばならない、と考えた。こうして、感覚は時に私たちを欺くから、感覚が想像させるとおりのものは何も存在しないと想定しようとした。(中略)わたしは、それまで自分の精神のなかに入っていたすべては、夢の幻想と同じように真ではないと仮定しよう、と決めた。しかしそのすぐ後で、次のことに気がついた。すなわち、このようにすべてを偽と考えようとする間も、そう考えているこの私は必然的に何ものかでなければならない、と。そして「わたしは考える、ゆえに私は存在する」というこの真理は、懐疑論者たちのどんな途方もない想定といえども揺るがしえないほど堅固で確実なのを認め、この真理を、求めていた哲学の第一原理として、ためらうことなく受け入れられる、と判断した。 (デカルト『方法序説』谷川多佳子訳)


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2006.01.17 | 本  | トラックバック(0) | コメント(2) |

私も読みました!
が、まだ記事にできずにいます。
読んだ直後は「おおっ!」と思ったのですが
Amazonのレビューに
「脳の解釈をすべて仮想と称し外界認識・他者認識と
想像力を区別できぬような子供だましの論理にはついていけない。」
というのがあり、またまたわからなくなってしまいました(・∀・;)
もう一度、読みなおさないとダメかも…

2006.01.18 11:44 URL | LIN #- [ 編集 ]

amazonに書いてある「外界認識・他者認識と想像力」が何を言わんとしているのかよくわからないのですが、科学が取りこぼしていた最大の領域である意識とか精神を科学に取り込もうとする考え方としてとてもおもしろく読みました。それでもヒューマニズムを感じさせてくれるのでよかったです。
唯識(ゆいしき)という大乗仏教の考えかたなんかもこれに近いように感じます。キルケゴールにはじまった実存主義も同様のものを感じます。宗教や哲学で語られていた世界にいよいよ科学が脳という切り口で切り込んでいくことになるのかなと。その上で人間がもつすばらしさを明らかにしてくれそうな気もします。
読みながら批判もありそうだなぁとは思いましたが、私は理屈抜きにおもしろかったですね。
宇宙の対極にあるかのような脳の神秘を感じました。

2006.01.18 20:53 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]












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