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堀江 敏幸

T河岸に繋留された賃貸船S号の上で暮らすことにした主人公。
第三者の視点で書かれてはいるのだけど、主人公が第三者と同一であるような錯覚にとらわれる。
堀江氏自身の生活スタイルと重なるところもあり、どこか私小説のような風合いを持った作品にもなっている。
河岸は堀江さんの好きなセーヌ河岸だろう。
ときおり利用される飯田橋のボート乗り場にもこの小説と同じような時間の流れがある。

ストーリーは船を借り生活のための支度をするところからはじまり、そこでの暮らしが綴られていく。
ときおり過去読んだ小説や映画が織り込まれ、本と自分の心境を重ね合わせる。
そこでの生活に、とりたてて語られるようなものがあるわけではない。
船の家主や郵便配達夫、少女、枕木さんとのささやかな交流があるだけ。
焦燥か傷心か、それとも放心、はたまた逃避か、それを考えることすらも意味をもたない時間。
理由はなんであれ、人生の一時を立ち止まるような感じです。
でも、それほど大げさなものでもない。
立ち止まっていることにさえ意味を必要としない。
ただ、何か同じことを繰り返し繰り返し感じている心地よさ。
それは、目的を持つことや意味づけることの無駄なことか。

物語の舞台はどこでもよいし、仕事はなんでもよい、誰と出会おうがかまわない。
位置の定まらない彼方にある船という住みかだけが、男の心持を表している。
否定でも肯定でもない不思議な小説。

大好きな堀江敏幸さんにまたまたはまりそうです。

「k」 「樽」 「スグリの木」 「卵と私」
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2005.03.30 | 本  | トラックバック(2) | コメント(0) |












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『河岸忘日抄』堀江敏幸
河岸忘日抄堀江 敏幸 新潮社 2005-02-26by G-Tools ひたすら前に突き進むことや、処世術というものから最も遠いところにいる「彼」は、フランスの河岸に係留された船を仮の住まいとし、本を読み、レコードを聴く毎日を送っています。 周囲との関係の中での自分のポジション

2005.10.03 11:25 | 月着陸船

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2006.02.02 21:21 | 及川的大人のブログ