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李 恢成

もうひとつの日本人の世界がここにはあります。最近の北朝鮮問題や韓国ブームもあって、在日に対して目が向けられる機会も多くなっているようですが、この本には特別でない在日の姿が描かれています。それも北朝鮮出身の在日です。日本に暮らし、韓国に拒否され、北朝鮮を認められない人生ってどんなだろうかと考えさせられます。浮遊したままのアイデンティティとでもいうのでしょうか。
いままでに感じたことのないリアリティを感じる小説で、たとえば地方出身者が東京で暮らすときに感じている東京との距離感に近いほどに感じられる在日の姿があります。これまでニュースで知っていた話がまったく違った目で見られて不思議な気持ちにもなります。
ただ、ここに描かれる話には、解き放たれない思いと答えのない現実が横たわっています。この小説ではその答えを求めていないようにさえ思えます。それは、あきらめというには自己否定すぎるし、昇華というには自己欺瞞をぬぐえないもの。つまるところ事実を事実として認め、無理な折り合いをつけないことに行き着くのかなと思ったりもしました。それが、在日にとってのぎりぎりの選択なのでしょうか。ただ、これは在日に限らず、すべての人が人生で選択している生き方なのかもしれません。そこに、この本のリアリティを感じるもうひとつの理由があるのかな。
この本で書かれる、朝鮮と札幌を行きつもどりつする生活は、朝鮮人の心情をそのまま表わしているのだと思います。
在日の人が好んで歌うという「木浦の涙」の話、朝鮮籍の変更のこと、サハリン施政120周年、韓民族文学者大会への参加、日本人妻の来日、「地上楽園」への帰国、朝鮮人学生のシニシズム、関東軍と旧満州...これまでも聞きかじっていた話が、一本の線でつながっていくようでした。
少々地味ではありますが、在日や朝鮮のことを知りたい人にはとてもいい本です。同じ日本に暮らすものとして読んでよかったと思います。歴史に翻弄された人々国家への衷心、民族への愛着によるアイデンティティってなんだろうと思わずにはいられない作品でした。

[本▼▼▼▼▽汁だく]
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2005.12.10 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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