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中島 京子

ヴィクトリア朝のイギリス人女性の旅行家の通訳をしたのではと思われる伊藤亀吉の古い日記を見つけたところに物語が始まる。
両者ともに実在した人なのだと思うけど、そこから先はフィクションなのか事実なのか判然としないまま。
当時の日本の生活と現代の日本の生活を対比して恋愛小説にしてしまうあたりは中島さんだからこそ成せる業か。

ただし、現代の物語の中で、昔の文献が入子のように挿入されているという形は、前作と同じ。
ある部分、それがこの人のおもしろさと思ってしまえば、それはそれでもいいのだけど、致命的なのは前作のようなユーモアがまったくないところ。
劇中劇なんていくらでもあるし、入子形式が同じなのは許せるけど、あまりに平坦なストーリーと描写はいかがなものか。
これをさわやかな恋愛物語と評価するのは著者に入れ込みすぎですね。
ただ、中島さんならではの不思議な脱力感は依然魅力的。
期待しすぎてしまうのは、デビュー作の『futon』ができすぎだったせいかも。
amazonのコメントで、バイヤットの『抱擁』を引き合いに出している人がいましたが、あれと比較してもしかたがないのでは。
構造的にはあちらのほうが複雑だし、現代と過去を行き来するというところ以外は別物とみるべきでしょう。
次回作こそ、中島さんの力を抜いた実力発揮作品を期待してます。
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2005.05.12 | 本  | トラックバック(1) | コメント(4) |

今、『日本奥地紀行』へのコメントを拝見してびっくりしたとこです。
この本のタイトルは知っていましたが
まさかあの伊藤についての話だったとは!
uotaさんのこの記事も拝見したと思うのですが
全然、気がつかなくて。
是非、読んでみたいです。
『futon』は田山花袋の『蒲団』と関係あるのでしょうか?
伊藤の事は『日本奥地紀行』に頻繁に出てきます。
uotaさんも機会があったら是非、読んでみてください。

2005.07.09 21:58 URL | LIN #- [ 編集 ]

やはりそうでしたか。
なんだか意外なところでつながっていて、面白いですね。
LINさんの記事を見てイザベラ・バードの『日本奥地紀行』も読んでみようと思いました。
ちょうど今、宮本常一の本を読んでいるところなんですよ。

『futon』は、ご想像のとおり田山花袋の『蒲団』です。
こちらは、かなりおもしろかったです。
『futon』を読んだあとの『イトウの恋』は少し二番煎じなところがあります。
ただ、中島さんの昔のものをリメイクする腕はたいしたものだと思います。
単に現代文にするのではなく、同じ味わいで新たな文学に焼き直してしまうような感じですよ。

2005.07.09 22:17 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]

uotaさんは、「イトウの恋」はあまり… だったのですね。
私は中島京子さんの作品はこれが初めてだったこともあって、なかなかいいなあと思ったのですが、でもデビュー作の出来の方が素晴らしいようで! こちらの記事を拝見して、ものすごーく「futon」が読んでみたくなりました。

「日本奥地紀行」も読んでみたい…
こうやって読みたい本が数珠繋がりに増えていって収拾がつかなくなっちゃうんですが、でもそういうのが読書の楽しみでもありますね。

2005.10.30 20:55 URL | 四季 #Mo0CQuQg [ 編集 ]

四季さん、こんにちは。
どちらがいいというより、構成が似ていたのがよくなかったかなと思います。
どちらを読んでも先に読んだほうがよく思えるかもしれませんねぇ。
また、読まれたら感想をお聞かせください。
楽しみにしています。

2005.10.30 21:26 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]












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