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香川 雅信

江戸時代への庶民文化への興味から、読んでみることにしました。
民族学との関連も知りたいという意味では、個人的にもタイムリーな1冊でした。
まさに本書のテーマでもある民間伝承とフィクションの関係がどうつながっていったのか。
といいながらも、当時の文化をさらりと紹介した軽い読み物かもしれないと思っていたのですが、柳田國男の『遠野物語』が紹介されたかと思うと、いきなり最初からミシェル・フーコーのアルケオロジー(考古学)的方法で妖怪感を再構築ときました。
アルケオロジーは思考や認識を可能としている知の枠組み=「エピステーメー」の変容として歴史を描き出す試みなのだと。
その著書『言葉と物』で「物」「言葉」「記号」そして「人間」の関係を再構築したのど同様の形で妖怪文化をとらえていくというのだから大変です。

ミシェル・フーコー的には、まず、神霊からの「言葉」を伝える「記号」であった妖怪が、近世になって「物」そのものと変質します。
そして「記号」は神霊の支配を離れ、人間のコントロール下におかれることとなる。その「記号」を本書では「表象」と呼び変えている。
その結果、人間そのものへ懐疑が向かうにつれて、妖怪は人間の心に住み着くことになったと。
おおつかみには、そんなお話です。

「妖怪」はもともと「化物」と呼ばれ、明治期に仏教哲学者の井上円了が『妖怪学』を提唱してからといいます。
昭和になってから柳田國男が『妖怪談義』を著したのを機に民族学でも認められる言葉となったのだとか。
安永5年(1776年)、鳥山石燕(とりやませきえん)の『画図百鬼夜行(がずひゃっきやぎょう)』によって初めて妖怪が形を見せます。
怪談文学の傑作とされる上田秋成の『雨月物語』や平賀源内の『天狗髑髏鑑定縁起』などとともに表象空間をつくったようです。
現実の「類似」から切り離された「表層」という形で視覚性を伴うものへと変わった瞬間ですね。
時を同じくして、記号を分類し可視的な「情報」として命名し「表(タブロー)」空間をつくった博物学に重なるという話もおもしろく読みました。

記号としての伝承から「幻術」、再現可能な「手品」や図版へと形や意味を変え、その後の種明かし時代を経て、妖怪世界は人間化し、同時に人間が化物化していく。
一方、田沼意次の貨幣社会にあったは、妖怪すらも「商品」としての「物」に変容させていったといいます。
その後、よく知られるモチーフに別物を当てはめ、そのずれを楽しむ「見立て絵本」へとつながりますが、「見立て」とは一度分離した「物」と「意味」を遊戯的に結びつけ、そこに新たな記号を生み出すこと。
それはリアリティの世界からはなれてしまった西欧の「類似」にも同じことが言えるようです。
それは、16世紀までの物同士の「意味」の関連づけをした「類似」時代から、記号により形成される「表」の分析を知の形式とした「表象」の時代としたフーコーの考えに一致するというのでから話が大きい。
それはさらに、肉体を持った人間を対象とした「人間」の時代となり、博物学から生物学へと知のありかたは進展していきます。
妖怪も「神経病」や「神霊」などとして人間の内部に巣くうものと変わっていくのですね。
「ドッペルゲンガー」と呼ばれる、もう一人の自分を「見てしまう」怪異が、近代の「私」への関心の暗部として立ち現れるのだという。
「啓蒙の時代」と呼ばれ科学や合理主義がうたわれる現代に至っても、「神霊」「オカルト」などという人の内面を妖怪に結びつける時代は続いているのだと。
水木しげるによる江戸時代の妖怪の再現、京極夏彦の「妖怪小説」の人気、フルタチョコのおまけについた海洋堂の妖怪フィギュアなどなど、妖怪は身近なところに着実に息づいているようです。

しかし、妖怪ものの本が、ここまで奥深い内容になっているとは思いませんでした。実に深い話でした。
妖怪なのか、フーコーなのか途中からわからなくなる始末。
一粒で二度おいしい、一挙両得の満足を得られる好著です。
正直驚きました。たいしたものです。

回向院の開帳では、神仏と参拝者の結縁から、人を集める「霊宝」が流行るものから流行らせるものへとなっていったという。
一度両国の回向院にも言ってみたいです。
途中紹介された事例で、「ファンタスマゴリア」がフランスで行われた幻灯興行の名前だということを知った。
たむらしげるの傑作「ファンタスマゴリア」も久しぶりに見てみたいと思いました。

両国の回向院

[本▼▼▼▼▽汁だく]
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2005.10.10 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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