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ジークフリート・レンツ

作者のレンツは巨匠らしいのですが、この小説に限っては巨匠といえるような重厚さはまったく感じませんでした。
連邦鉄道のハンブルク駅(らしい)の遺失物管理所に配属になった24歳のヘンリー・ネフ。
彼のと上司や同僚、家族などとの交流を描いた軽快な小説です。

読み始めてすぐに、遺失物のひとつひとつに持ち主の思いがあるんだなぁなんてことを感じました。
ものに対する人の思い入れって奥深いですね。
なぜだかわかりませんが人生そのものを感じてしました。
それを目の当たりにする遺失物管理所の仕事はなかなか捨てがたいと、ヘンリーと同じように楽しんでしまいました。
ほんとは閑職なんでしょうけど、これはこれでなかなか楽しい。
異動になっても意に介さず、ひょうひょうと仕事をするヘンリーのキャラクターもいい味を出しています。
それとあわせて、人と人のさまざまな交流やドラマがあっておもしろいですね。

それにしても、レンツの遺失物管理所という舞台設定がうますぎる。
「失くすこととまたみつけること」をテーマに選んだことがこの小説のすべてのような気がします。
日本では「紛失したもの」が、西欧では「みつかったもの」ということになるらしいのですが、失うことととみつかることってとても奥深いことのように感じました。
そもそもフントビューロー(fundburo)を遺失物管理所と訳したのはよろしくない。
きっと見つかることことがとても意味深いことなのです。

ドイツの事情などを知っているともっと楽しめるのかもしれませんが、全体に淡々と話が進んでいきます。
ストーリーのほうは、多少の起伏があるものの、驚くような展開があるわけではありません。
そういう意味では、もう少し人情味を前面に出したストーリーになってもよかったかな。
いや、そうじゃなくて、この淡々としたところがこの小説の本質を伝えるのに適しているということなのか。
巨匠の軽くて深い小説でした。


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2005.04.18 | 本  | トラックバック(1) | コメント(2) |

同じレンツの「アルネの遺品」は、また違うタイプの作品でしたよ。
私は「遺失物管理所」の軽快さが好きだったのですが、一般的には「アルネの遺品」の方が評価が高いようですね。(多分)
uotaさんが読まれたらどんな印象を受けるのかしら…
その時はぜひ感想をお聞きしたいです。

2005.09.05 11:39 URL | 四季 #Mo0CQuQg [ 編集 ]

『アルネの遺品』は悲劇なんですね。
『失物管理所』とはちょっとちがったテイストになりそうですね。
といっても『失物管理所』もさほど明るい話しでもないかな。
こちらもクレストで出ているとは知りませんでした。
また読んだらコメントします。

2005.09.05 21:28 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]












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