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戦争が遺したもの

鶴見 俊輔

思想の哲学の編集長として戦後日本を代表する知識人鶴見俊輔さんへのインタビューという形でまとめられた本です。
参議院議員であり大政翼賛会総務、後の鳩山内閣厚生大臣の鶴見祐輔を父に持ちながら、その転向ぶりをよしとせず自分の生き方と貫いた人。
第二次世界大戦開戦時にあえて留学中のアメリカから帰国し、敗戦色の濃厚な日本の兵士として戦地に赴いた経験も持たれています。
鶴見氏が気負いのまったくないとても平明な表現をされる方ということもあって、戦前から戦後にかけての日本の置かれた状況が手に取るようにわかります。
あくまで一人の人間の視点を通したものにすぎないと言えばそれまでですが、そんなことを感じさせないほど冷静に信念を持って昭和を見つめてきた生き様を感じます。
空襲体験、従軍慰安婦問題、占領政策、憲法改定、天皇制存続、思想の科学創刊、60年代安保、ベ平連...
本書には戦前、戦後の日本を知るに十分な内容が語り尽くされています。
終戦記念日の今日、この本を手にしているのも何かの縁かもしれません。
日本だけでも300万人の死者を出し、アジア各国に対して行われた戦略行為の犠牲者を含めればその数は途方もないものになります。
このことをわすれないようにしなければ。

↓続く
人間誰しも限られた情報と視点からだけ物事を見がちになりますが、鶴見氏のような大局観を持った方の話を聞くと霧が晴れるような心地よささえ感じます。
思想の科学の多元主義につながるものなのかもしれません。
大衆を代表する知識人と評されているようですが、まさに的を得ていると思いました。

戦時中を振り返る部分で、ご本人の言葉に「恐ろしい」という表現が何度か出てきますが、それが必ずしも自分自身の死と重なるものではなく、当時置かれた環境に関わるものだったことに衝撃を受けました。
それは戦時中に限られたものではなく、現在の日本にも十分あてはまるものなのだとろうと思います。
たいした考えもなく時代の流れに都合よく身を任せることだけに精を出した当時の政治状況に憤りを感じるばかりです。
日本人の多くの政治家や知識人が取った優柔不断な態度に怒りを感じるとともに、それを許した日本人の弱さを恥じ入るばかりです。
物事を都合よく一極からしか見ないような輩が多い中、鶴見さんのような考え方をした人もいたのだということに少しではあれ救いを感じました。

この本は、1964年生まれの小熊英二氏と全共闘世代でフェミニズを代表する上野千鶴子氏によるインタビューという形でまとめられたものです。
異なった世代による聞き取りと意見交換もこの本を意義深いものにしているように感じます。
それにしても鶴見氏の普遍的な姿勢には共鳴するものが多くあります。
唯一の解がないことを知りながら人としての道を踏み外さない姿勢には頭が下がります。
この本を読むと大儀なく「機を見て敏」な生き方ばかりを奨励するかのような日本の教育制度や政治のありかたに疑問を感ぜずにはいられません。
どの時代にあってもきちんとした思想や生き方を持っていることが一番大切なことだと痛感しました。

今日は41日ぶりに真夏日から解放された涼しい朝です。

雨の窓辺でキースジャレットのザ・メロディ・アット・ナイトを聞きながら
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2004.08.15 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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