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雛の家

久世 光彦

時代は、第一次大戦を終え、第二次世界大戦が始まる昭和13年から16年あたり。
日本がつかの間の平穏を享受しているころ。
創業150年になる老舗形店「津の国」に健やかに育つ、ゆり子、真琴、菊乃の三姉妹。
町で評判の美人姉妹が大人の女性へと羽化する数年間をとても繊細かつ巧みに描いた作品です。
荒れ狂う時代に翻弄されながら生き急ぐ朝鮮人キムや右翼の結城。
彼らとの恋に落ちていく長女ゆり子と次女の真琴。
その姉たちを追うかのように、三女の菊乃も唖者で美しい顔立ちの人形職人鶴吉に心惹かれていきます。
そして、その鶴吉までもが時代の荒波に身を投じることを願うように。

激動の時代に揉まれながらも命を賭け革命を目指す男たちと、大切に身を守りながら大人へと成長していく女たちの生き様を、とても美しい物語として見せてくれます。
とくに、少女が成長していくときに気づかず引き寄せる「罪」になんとも言えぬ美しさを感じました。
また、作中に空襲場面や戦闘場面があるわけでもないのですが、ふと気がつくと時代のうねりの最中にあるあたりは、人知れず忍び寄る戦争の怖さのようなものをひしひしと感じます。
単なる少女たちの青春物語の範疇にとどまるようなものではなく、時とともに消えるもの生まれるものの盛衰を描いたみごとな純文学だと思います。
どこかの大河ドラマにでもなりそうな物語です。
舞台が私の使う電車の沿線にある水天宮ということもあり、別の親近感を感じながら読みました。
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2004.08.15 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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