FC2ブログ
嫉妬

アニー・エルノー

自分の認識が間違ってなければ、こういう独白形式の小説は日本には少ないような気がします。
自分で読んだ範囲で記憶にあるのは、村上龍の「タナトス」ぐらい。
これも文化の違いということなのでしょうか。
欧米人のほうが自己を主張する習慣が強いのかもしれませんね。
作者は1940年生まれの女性。
写真を見ると美しさと知性を兼ね備えたような印象を受ける方です。
それなりの社会的地位にある人がこのようなテーマで己を吐露するような小説を平気で書くところに欧米の芸術に対する懐の深さを感じます。
海外文学を読むと、大人の積極的な生き方を感じるものが多くて楽しいです。

2編からなる作品ですが、ひとつが別れた男とつきあう女性への「嫉妬」をテーマにしたもので、もうひとつが「中絶」をテーマにしたものです。
前者については、まさに嫉妬する自分を客観的に描いたものなのですが、人間の根底にある欲望と向き合うような不思議な美しさを感じてしまいます。
決して下世話にならず上質な文学として書かれているところがすばらしいですね。
「嫉妬」という感情で愛情を描くことの奥深さを感じました。
もうひとつの「事件」のほうも、1975年までフランスでは違法とされた中絶をテーマにしたものなのですが、こちらは彼女自身の経験からの告発というようなものです。。
感情に溺れないストイックさには驚かされます。
過去の作品がフランスでベストセラーになっているのも頷ける気がします。
世界に衝撃を持って受け入れられたという「シンプルナ情熱」も機会をみて読んでみたいものです。
スポンサーサイト



2004.08.23 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://slowfish.blog9.fc2.com/tb.php/406-42f4f23f