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哲学の横町<br />

木田 元

この方は、ハイデガーを専門とする先生です。
20世紀にもっとも影響を与えた哲学書と言われる未完の大著「存在と時間」を信奉されているようです。
その一方で、ハイデガーを研究しつくしたひとつの結論として、カッシーラーの「シンボル形式の哲学」あたりを20世紀最大の哲学遺産としてあげたりもされます。
さらには詩を愛し、滑稽本を好む、早い話が、哲学からイメージする単なる堅物ではないようです。
ハイデカーと言えば、ドイツ実存主義者として知られ、後にフランスに起こる実存主義につながります。
そのあたりに詳しい人の読み物としても面白いし、本を読む視点が思想研究をしてきた人ならではのものだったのでとても参考になりました。

ハイデガーや、彼に限らずニーチェ以降の現代欧米の思想家たちは、もはや<哲学>をどの文化圏にも普遍な知とみなさず、西洋という文化圏の、しかもある特定の時代に特有な特殊なものの考え方だと見て、その乗りこえを図っている。つまり、彼らの思想的営みは<哲学批判>であり、<反哲学>なのである。
彼らの考えでは、<哲学>とは、自然に包まれて生きてきた人間がその自然を超え出、自然の外に身を置いて、いわば自然を支配しようとしたとき、それを正当化するために作り出した特殊なものの考え方なのであり、西欧文明はこの考え方を基盤に形成されてきたのである。
プラトンに始まる西洋は、そのために<イデア><純粋形相><神><理性>といった-呼び名こそその時どき変わったが-超自然的(形而上学的)な原理を設定し、それに準拠しながら自然を見る特殊な自然観を作ってきた。つまり、自然をそうした超自然的原理によて形成されるべき無機質名材料(マテーリア)として見る物質的(マテリアル)な自然観を作ってきたのだ。そして、少なくとも近代のヨーロッパ文化は、明らかにこの自然観を基底にして形成されてきたのである。その帰結が技術文明であることは言うまでもない。
ニーチェ以降の欧米の思想家は、こうした西洋文化の行く末を見据え、それを乗り越えるために、もう一度自然を生きたものとして見る古い見方を復権しようと企てている。古代ギリシャにおいてもソクラテスやプラトンよりももっと古い時代には、万物を<葦芽(あしかび)の如く萌え騰がるものによりて成る>と見ていた古代の日本人のように、自然を生きて生成するものと見ていたのである。そうした生きた自然の復権を最初に高層したのがニーチェであり、ハイデガーはその企てを受け継いでもっと精緻に展開した、と見てよい。
この百年あまり日本人は、西洋文化の技術文明を学び、それを模倣し追い越そうとしてきたが、その間に西洋そのものにおいては、自分たちのこれまでの文化形成への原理的な反省をはじめられ、その乗り越えを企てられてきた、ということになる。
彼らのこうした考え方なら、われわれ日本人にもよくわかる。もともとわれわれには、自然の外に超自然的な原理を設定し、それに準拠しながら自然を見るといった考え方-これが<形而上学>と呼ばれるわけだが-はなじまない。われわれにとっては自然こそがすべてであり、そうした生きた母なる自然に包み込まれ、それに追随して生きるのが人間のあり方だと、つい最近まで信じて生きてきたのだ。したがって、<形而上学批判>ならわれわれの方が心得ているといってよいぐらいである。


この一文はわが意を得たりというところです。
ギリシャ時代には「存在」は「自然」、つまり「生成」としてとらえられ、一見ギリシャ思想の継承者と見られていたローマがこれを変えたということのようです。

いろんなところで発表されたものを寄せ集めたものなので、多少の重複感はありますが、読み進むにつれて、読んでみたいと本や知りたいことが山ほど出てきます。
知的好奇心をとてもくすぐられる本でした。
アルチュール・ランボー 「幸福」(地獄の季節)
チェーホフ 「煙草の害について」
太宰治 「おしゃれ童子」「親友交歓」
井伏鱒二「丹下氏邸」
ポオ「実業家」
モリエール「女房学校」「タルチュフ」
森有正「ドストエーフスキー覚書」
バルザック 「風流滑稽譚」
木田元 ハイデガー「存在と時間」の構築
ハイデガー「ニーチェ」
リルケ
パウル・ツェラン
メルロ=ポンティ「知覚の現象学」
ヘーゲル「精神現象学」
ドストエフスキー
ポール・ニザン「アデン・アラビア」
キルケゴール「死に至る病」
小林秀雄
モーツァルト「ピアノ協奏曲23番」「クラリネット五重奏曲」「クラリネット協奏曲」「ヴァイオリン・ソナタ」弦楽四重奏曲」「弦楽五重奏曲」
マービン・ルロイ「心の旅路」
「男はつらいよ」
ちあきなおみ
逢坂剛「燃える地の果てに」 岡坂神策物、お茶の水署物
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2004.10.03 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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