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日の名残

カズオ イシグロ

イギリスの田園地帯にある、米人ジョン・ファラディ氏の所有するダーリントン・ホールと呼ばれる邸宅で働く執事の回想記録。
ソールズベリーへの6日間の小旅行の間に過ぎし日を回顧するかたちで物語が進みます。

この話は以前、本でも映画でもよいと聞いたことがあって映画のほうで済ましていたのですが、本好きの方の間でとても評判がいいようなので遅ればせながら手にとりました。
印象は映画も本もそれぞれによいところがあって、以前聞いていたとおり甲乙つけ難いものでした。
原作を映画化した作品の場合、たいがいは本のほうに軍配があがるものなのなのですが、これに限っては映画もかなり健闘していると思いました。
イギリスの田園風景や建物の風情、登場人物たちの様子など、小説以上に雄弁に語りかけてくるものが多いような気さえしました。
失われていくものへ対する郷愁というところはやはり本の方がいいですね。
小説は執事のスティーブンスの言葉でほとんど書かれているので、彼の生き様そのものを楽しむもの。
イギリスの読者にとっては輝かしころの大英帝国とそれを懐かしむ気持ちが、スティーブンスの回顧と重なるのかもしれません。
主人がイギリス人からアメリカ人に変わったあたりを含めて、受け入れざるを得ない時代の流れと消え行く美しい伝統をうまく対比して描いた話です。
古いものにこだわりつつも、主人に合わせて新しいものを取り入れようとするスティーブンスのキャラクターはなかなか印象的です。
ただ、スティーブンスが主事として有能な上雄弁すぎるのには、少々閉口するところもなきにしも非ず。
琴線に触れるかと言われれば、世界が違いすぎてちょっと考えてしまうところ。
庶民に生まれてよかった(笑

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2004.10.26 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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