FC2ブログ
  スティグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考

藪下 史郎 荒木 一法

グローバリズムの問題は90年代末から言われていたことだけれど、その理由を知りたくて本書を手に取った。
反グローバリズムの旗手スティングリッツ教授の講演をまとめたものだが、とてもわかりやすいものになっている。

グローバリズムとは、制度上の規制緩和ないし自由化によって、国家間の労働や財・サービス、そして資本の移動が活発になった結果、国家間の相互依存関係が強まったこと。
公的機関の介入をできる限り排した自由な市場経済にこそが各国経済の潜在能力を最大限に引き出す「ベスト・プラクティス」である。


基本的にはケインズを支持し、グローバリズムはアメリカと欧州などの先進国を豊かにするだけのものであったという批判的な立場に立った内容。

東アジア諸国もその恩恵を受けた側にあたるが、その理由は資本市場の自由化を促すIMFの助言をすべて受け入れなかったからだという。
一方、それを忠実に守ったアフリカのサハラ以南の国々のような最貧国では一人当たりGDPが2から3%下がったという。
ラテンアメリカでも独自の政策を取ったチリ以外の国々も、すべてGDPのの下降を余儀なくされている。
グローバリゼーションは一国の行動が全世界の経済に影響するので、本来は国際機関がその影響を調整すべきなのに、IMFをはじめとした国際機関がこの機能を果たさないばかりか逆行したというのが本書の論旨になっている。
そもそも、アダム・スミスの「見えざる手」など理想論でしかなく、「市場の失敗」はいたるところで発生するのだという。
その原因となるのが1国にとどまらない外因性。地球環境問題もその代表的な例で、アメリカは京都議定書さえも背を向けたままと批判的。
まさに教授の言うとおりだろう。
グローバリズムは、先進国の都合だけで、十分なバックアップもなく実行された壮大かつ無謀な実験であったのだろう。
国際機関による協調こそが、唯一グローバリズムをささえる機軸であったはずなのに、それさえ果たされないまま富の移転と集中が果たされた。

もともと、MFの弱体化は今にはじまったことではない。
固定相場から変動相場に移行したときにその本来の役割に好ましくない変化が起こり、旧共産主義国の資本経済への移行時のノウハウ不足などを露呈した。
さらには、
1.循環的な貸付(好景気時に貸し付け、景気後退期に増税と支出削減による財政赤字減という逆循環的な貸し付けるという悪行。
2.資本の自由化を促進したことにより、産業に使えるために有効な一定期間の資本滞留さえもなくなった。短期資本や投機資本の出入りが無制限になされるようになり、タイやインドネシアで起こった通貨危機をたやすく起こす要因をつくった。
3.ウォール街が技術に長けるリスクを細分化した商品が、途上国のみのリスクとして集中させることになった。つまり、リスク分担ないしは軽減するという市場原理は機能していないという状況をつくった。99年にロシアルーブルが急落したとき債務がドル建てだったことからモルドバが被ることになった通貨危機も本来先進国が負うべきだった。
4.不安定な市場に対して各国が準備する通貨がすべてドル(Tビル)になっていてアメリカは借金まみれながらも潤沢な資金を得られる。一方で途上国は自国の対ドルレートを安定させるために高利でドルを借り入れる。安い金利でドルを預け、高い金利でドルを借り入れる。まさに恒常的な逆ザヤ状態。
残念ながら、問題をあげればきりがないようだ。

日本はIMFに多額の出資をしているが、それが何の役にたっているのだろう。唯一の拒否権を持ったアメリカ(財務省とウォール街)はIMFを利用し続ける。
それにしてもグローバリズムというのはいったい誰のために勧められたのか。
問いかけるのも空しいが、アメリカのため以外の何者でもないと思う。
軍事力のみならず経済でもアメリカの一人勝ちの構造は変わらないと痛感した。
資本主義、市場主義、金融主義がほとほといやになる。
スポンサーサイト



2004.11.21 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://slowfish.blog9.fc2.com/tb.php/348-7f0635bc