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宮本 常一

宮本常一は柳田国男に始まる民俗学を継いで、日本を隅々まで歩いて庶民の生活を聞き取り記録した人。
昭和に入って大きく変わり行く時代を目の当たりにして、日本の村々に残る消えゆく生活を伝承したいと思ったのだろう。
この本を読むと、そこに暮らす一人ひとりの生き様が日本人そのものの記録として語りかけてくるように感じる。

村の寄り合いのあれこれ(対馬)、愛知県名倉の百姓談義、田植えが女性の仕事だったころサゲつきの田植え話、盲目の老人の女性関係やヨバイの話、牛も見たこともないような村(愛媛県寺川)、対馬での鯛漁(山国県久賀)、奔放な旅をする世間師(山口県周防大島)、鳥羽伏見の戦いを見た翁(河内長野)...

そこには国の歴史と言えるようなものはなく、ただ近隣の人々が助け合いながら共同生活を営んでいるだけ。
文字のないところには時間の感覚さえもない。
こういう記録を読むと、日本は変わってしまったと思う。
それは決して悪いことではないのだろう。
ただ、日本のよさがどこにあったのかもわすれられてしまったかもしれない。
人の約束や思いやりより国の規則が優先される世界。
さすがに大正以前に生まれた人は少なくなってきていると思うけど、 民話の語り部としてのお年寄りの話にもっと耳を傾けないとと思う。

一つの時代にあっても、地域によっていろいろな差があり、それをまた先進と後進という形で簡単に割り切ってはいけないのではなかろうか。
また、われわれは、ともすると前代の世界や自分たちより下層の社会に生きる人々を卑小にみたがる傾向がつよい。
それで一種の悲痛感を持ちたがるものだが、御本人たちの立場や考え方に立ってみることも必要ではないかと思う。


この本は、雑誌『民話』に収められた「年寄たち」を中心にまとめられたものだそうです。
それは、人が自然と一体になって暮らしていた時代。
地方それぞれの方言に共同体の一人として生きる術のようなものを感じる。
それがいやで都会に出てきたが、そこに人と人の繋がりがあったのだろうと改めて感じる。
とくに宮本常一は山口出身の人ということもあって、関西の話が多く、方言も身近に感じられるものが多く親しみを感じました。
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2005.07.20 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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