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林 芙美子

林芙美子は、以前彼女が幼年時代を過ごした尾道へ行ったときから気になっていた作家です。
もともとは志賀直哉の尾道の住まいと小津監督の記念館を訪ねる予定だったのですが、これが彼女との出会うきっかけになりました。

読み始めて感じたのは、時代背景が今とはまったく違うのに、ほとんど違和感がないということ。
どうやら主人公がすこぶる現代的な女性だというのがその理由だったようです。
定住の地を持てない貧しい父、母ともはなれた心細い生活が身につまされるところもあるのですが、それ以上に心打たれるのは主人公のひたむきさ。
ときおり見せる弱さに手を差し伸べたくもなります。
なにも好き好んで、厳しい生活を選んでいるわけではないでしょうが、もう少し楽な生き方もあるって、声をかけたくなるほどです。
それにしても、彼女の自律して生きていこうとする気迫はすごい。
夢を捨てず前向きに生活する姿がすがすがしくさえあります。
100年前の時代を考えると、貧しい中で学び、自活しようとする女性への風当たりは相当強かったと容易に想像できます。
主人公の信念を持った生き方と当時の女性の置かれた境遇の隔たりに強く心を打たれる小説でした。

時代が明治のあたりということで、ちょうど現代史関係の本を読んでいたこともあって興味深いところも多くありました。
芸者として売られる友、炭鉱夫に夢を託す友、万年筆やステテコを売る露天商、鮮人と呼ばれる人たちの存在、満州へ売られる子供、樺太へ移住する人。
文明開化といわれた明治にはこういう生活もあったのですね。
当時の日本人の生活を垣間見る思いです。
遠ざかりつつあった明治が身近に感じられるこのごろです。
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2005.07.04 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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