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古川 日出男

犬というとアリステア・マクラウドの一連の作品を思い出すが、犬の使われ方がとてもよく似ていると思った。
映画では『アモーレス・ペロス』の冒頭の凶暴な犬と惨殺される犬の映像が頭を過ぎった。

戦争に明け暮れた20世紀、実戦と冷戦の時代。
2大大国に翻弄された世界を軍用犬の血の繋がりの視点で描く。
この時代を言葉で説明しようとしてもとてもじゃないけど手に終えない。
だからこそ半分が犬の視点になってしまったのだろう。
これが人間の視点だけで書かれていたら、さぞやつまらない話になっただろう。
どうして犬ならよかったのだろう。
たぶん、人間にとって犬以下の世紀だったということと、凶暴な犬以上に手をつけがたい動物的な殺戮の繰り返された世紀だったからだろう。
まだ、犬のほうがましというのが言いたいことのすべてのような気がする。
20世紀を犬になぞらえたところがこの作品の秀逸なところ。
この本の評価は、この一点に尽きるような気さえする。
西と東で起こったいくつもの流れが、現代の一点に結びついていく。
20世紀を見事にとらえた壮大な現代史小説だと思う。
すでに直木賞の声も出始めているけど、こういう骨太の直木賞が生まれれば、日本の文学界も活性化しそうに思います。
作者の前作の『サウンドトラック』での消化不良を克服して、見事にオリジナリティを開花させた作品に仕上がっています。
あえて難をあげれば、まだまだ劇画的な大雑把さで雰囲気勝負のところはありますが、ここまでくるとそれもオリジナリティか。
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2005.06.22 | 本  | トラックバック(2) | コメント(4) |

古川日出男が好きというよりも現代史が好きなので
気になってます。
ただ『gift』がいまひとつだったので、なかなか購入にふみきれません。

>まだまだ大雑把で雰囲気勝負のところはありますが
浅いということでしょうか?

残念ながらAmazonでは現在、在庫なしのようですが…(^^;

2005.06.23 13:04 URL | LIN #- [ 編集 ]

『gift』は読んでないのでわからないのですが、『ベルカ、吠えないのか?』はいい本だと思います。
浅いというか、かっこよさが前に出すぎるようなところがある感じです。
冒頭で「世の中にフィクション以外の何がある」と啖呵をきっているのですが、まさにそのままの小説です。
でも、それも悪いことではなくて、この人の持ち味として好感の持てるものです。
それにしても、現代史を200ページ程度のこんな形にしてしまった力には驚かされます。
とくに宇宙を始めて飛んだライカ犬に使い方が最高にうまいです。
現代史好きのLINさんはなんとかだいじょうぶだと思いますが、圧倒的に男好みの小説ですよ。

2005.06.23 19:13 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]

uotaさん、こんばんは。
古川日出男作品はまだ2冊目なので、どういう魅力と持ち味がある方なのかとても興味があり、uotaさんの的確な記事を読みながら、なるほどと感心しました。
歴史モノが苦手ゆえ五感と雰囲気に頼って読んでしまったので、
今イチ掴みきれなかった部分も多く、何だか少々後悔を覚えております。

今後もどうぞ宜しくお願い致します!

2005.12.21 20:20 URL | ましろ #C9/gA75Q [ 編集 ]

ましろさん、コメントとTBありがとうございます。
私も、ほとんど五感と雰囲気に頼って読みました。それで歴史を感じられるところがすごいところですね。
古川日出男は、これからも、おもしろい本を書いてくれそうで楽しみです。

2005.12.23 10:20 URL | uota #ogz9v/Dw [ 編集 ]












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