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万物理論

グレッグ・イーガン

いやはや、疲れました。
読み終わって見れば、大まかな話の筋自体はわからなくもないのですが、とにかく物理学や生物学の何だかわからない専門用語が次から次へと出てくる。
知的興奮なんて言っている場合じゃないです、これは。
心理学やら哲学的な要素、科学、医学、宗教などもからんでくるから頭の中の混乱は避けようもありません。
考えようによっては、それのこの作品の一部なのかもしれませんが。
リアリティを持たせようとするために、本題と直接関係ないところまで仔細に描かれるので、ますます混乱に拍車がかかるわけです。
SFのノリになれていないものにとっては、それだけで大変。
敵だか見方だかの判別も、言われればわかるというような具合で、とにかく読者としても身の置き場がない。
SF特有の造語も多いし、600ページでもあふれてしまいそうなほどのSF的アイデアの渦。
途中から理解しようとせずに、自分の感性だけを信じてなんとか最後までたどりつきました。
はたしてもう一度読めばなんとかなるものか、それすらもわからいないほど。
ということなので、この時点で何がネタバレになるのかも正直わかりません(笑)
以下、【ネタバレ】になる可能性ありと思ってご覧ください。

【ネタバレ注意】

時代は、すべての自然法則を包み込む単一の理論「万物理論(Teory Of Everything)」という考え方がまさに誕生しようとする2055年。
この万物理論が、宇宙の誕生からそこに存在するもののすべてを説明するというのですからとんでもない理論なわけです。
主人公で映像ジャーナリストのアンドルー・ワースは、同じ映像ジャーナリストのセーラ・ナイトから引継ぎ番組の製作を押し付けられる。
TOEの完成を目指す3人の学者の発表が行われるアインシュタイン没後百周年記念の国際理論物理学会議を取材するために南洋のスレートレス(成長する無政府島)に向かう。
そこでノーベル賞受賞学者で万物理論の提唱者の一人であるヴァイオレット・モサラの取材が始まる。
到着した空港で偶然に出会ったのが、アキリ・クウェールという汎性(無性?の人間)。
彼女?は、自分は「人間宇宙論者(AC)]の主流派であり、理論を完成させるためにモサラを守りたいと言う。
偶然であったのか、目的は何か、正義なのか悪なのかさえもわからない。
その後、多くのカルト集団や人と出会いながらの取材が続く。
そして、非主流派ACに捕らえられた船中で、「基石」があらゆることの出発点であり、宇宙の出発点となる、そして「基石」が「基石」になった瞬間のアレフという話を効かされる。
TOEを完成する「基石」となるものは一体何なのか。
そのころ、本書の原題でもあるディストレス(急性臨床不安症候群)という謎の疫病が急速に蔓延し始める。
この症候群に感染したものは同じような言葉をうめく。
「この情報パターン、こうした認識を意識し所有しているこの状態は、層状に拡張しつづける系(システム)でそれ自体を覆っていく。情報を符号化するニューロン、ニューロンに栄養を与える血液、血液を循環させる心臓に栄養を補給する腸、腸に食物を送る口、口を通貨する食物、食物を産する畑、大地、日光、数兆の星」
「ニューロン、心臓、腸、タンパク質とイオンと水が脂質の膜につつまれている細胞、発生の過程で分化する組織、マーカーホルモンの勾配の交差にスイッチを入れられる遺伝子、たがいに噛み合う百万の分子の形状、四価炭素、一価水素、電子の共有を介して結合する原子核、それを構成する陽子、静電気の反発力を相殺する中性子、場の励起の階層においてのレプトンのパートナーとなるために両方向にスピンするクォーク、その土台となる十次元多様体...これらが全位相空間における破れたシメントリーを定義する」
「ニューロン、心臓、腸、一個の細胞に遡れる形態形成、別の体の中の受精卵。別々の提供者を必要とする二倍性の染色体。祖先の形質の反復。従来の系統からの種を分離させる突然変異、単細胞生物、自己複製する小片、ヌクレオチド、糖、アミノ酸、二酸化炭素、水、窒素。凝縮する原始星雲 - そこに満ちた重元素はほかの星で合成され、それが中を通過していく重力的に不安定な宇宙は特異点ではじまりそして終わる」
それは、自分を基石だと人に信じさせる伝染病だった。
「基石」が情報と混合化したときに、混合化に引きずり込まれる人間は幾何学的に増加する現実。

宇宙と個人のアイデンティティを直結させるような壮大な物語、まさに万物理論なのでありました。
統一場理論を知らなくてもぎりぎり大丈夫か(笑)
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2005.01.09 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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