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ある夜、クラブで

クリスチャン・ガイイ

自分でイメージを持っているフランスの小説そのもの。
これほどその期待に沿うものもないと思う。

よい本に出会うと、この作品をどうすれば伝えられるだろうかと迷うことがあります。
ある部分、作家と作品を共有するような気持ちになるときです。
残念ながら、この小説のすばらしさを表現する力は私にはありません。
自分にとってはそんな風に感じる作品でした。

話自体はきわめてシンプルです。
ジャズミュージシャンを志しながら挫折しエンジニアとして生計を立てる男シモン。
ある日、出張先の海辺の街のクラブで自分そっくりの奏法をしている若者に出会い、ピアニストだったころの自分を呼び覚ますことに。
帰宅の電車に乗りそびれた一夜の出来事が、その後の人生を思わぬ方向へ...
主人公のシモン、クラブで出会ったデビー、妻のシュザンヌ、息子のジャミ、さらには猫のイカレ。
家族に遠い人ほど家族愛を感じるのはどうしてだろう。
本当に孤独なことのありようを、妙に美しく描ききったような物語でした。

この本のよさはストーリーそのものではなく、独特の文体にもあります。
表現がとてもリズミカルで、印象派にみられる光のきらめきのようなものを感じます。
読む人によっては逆にクールな印象を強く受けるかもしれませんが、その手法が作者の持つ独特の味わいを醸し出していることは間違いないですね。
語りべがシモンの友人を中心に、シモン本人であったり、息子であったりと、めまぐるしく変わっていきますが、これも決してわかりにくいものではなく、かえって読みやすくさえ感じます。
この人称の取り方もとても新鮮で楽しく読めました。

作者がもともとジャズ・ミュージシャンを志していたということもあり、アーチストや曲の名前がたくさん出てきますが、それが鼻につくということもなく、小説にほどよい彩を添えていました。
装丁には、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」が使われています。
ジャズとフランスを好きな人には絶対おすすめな1冊です。
新年早々いい本でスタート切ることができて幸せな気分!
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2005.01.02 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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