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梯 久美子

2006年大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。栗林忠道中将の硫黄島での戦いを多くの取材をもとに詳らかにしたノンフィクションです。単なる史実ではなく、人の生きる意味をまでをも考えさせられるものでした。決して凄惨な事実だけを問うものではありません。
もともとアメリカへの留学経験のあった栗林忠道には日本軍の勝算は考えられず、それが逆に東条英機による硫黄島司令官という命令につながったとの話さえもあるようですが、自分の意思に反する組織の指令に沿わざるを得ないときに人は何を考えるのでしょうか。絶対と思われる制約下にあって、一人なら考えられることも数万人の生きる意味までも前提で問われたときの苦悩は想像を絶するものだったと思います。後方支援も叶わず無条件降伏意外に手段がない戦場に送り込まれたときにいったい何をできるのでしょう。これがこの本を読んで一番に感じるところです。
もうひとつは、玉と砕けるという「玉砕」という美辞麗句のもつむなしく悲しい響き。この本を読んで、天皇でなく本土の家族を思う一身から、硫黄島で最後の最後まで戦う道を取った日本兵に思いを寄せることはたやすいことです。それによりアメリカ兵が日本への攻撃をあきらめるかもしれないという微かな期待が込められていたとすればなおさらのことです。でもそれを忠義を重んずる武士の魂のような美徳としてよいのか。自決を認めず、最後まで抗戦することを強いられたことに対しては、やはり賛辞はされるべきではないという思いは払拭できません。
硫黄島の例に限らず、無謀な抗戦がことごとく裏目に出た第二次世界大戦。アメリカの選択は民間人をも巻き込む焼夷弾による都市空襲や原爆による無差別殺戮をとることになってしまいました。それに対し考えるべきことも多いと思います。
本書を読んで栗林忠道のとった限られた選択肢からの決断と意思に美談としての共感を感じる人も多いと思いますが、彼の知性と冷徹なまでの合理性は日本人の負の価値観とむすびつき、自虐的なバンザイ攻撃とさほどの違いのない結果を招いてしまったのではないかと思わざるを得ないところもあります。
ひとつの史実と一人の人間の生き様から異なる二つの異なる思いを得られる客観性を持った良書だと思います。
この小説の舞台となった硫黄島の戦いが、アメリカ映画『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』の2本の映画となって年内に公開されます。アメリカと日本のそれぞれの目から見た硫黄島の戦いが描かれているようです。機会があれば是非観てみたい映画になりました。戦史に残るこの死闘に学ぶべきことは無数にあるように思います。

<覚え>
『硫黄島の星条旗』 ジェイムズ・ブラッドリー

[本▼▼▼▼▽大盛]
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2006.10.14 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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