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アメリカの階梯

西垣 通

まず、この本は装丁がうまくないような気がします。
あまりに内容との格差が大きい。
この装丁で本書を手にしない人がいるとしたら、それはとても残念なことだと思う。

実際の内容はアメリカという国が生まれ目指して来たこと、そして、これからも追い続けるだろうことについての深い考察を下地にした第一級のエンターテイメントです。
とは言うものの、ダーウィンの進化論にまで及ぶストーリーは、決して社会科学的な議論を前面に出したようなものではなく、あくまでフィクションとして真壁作夢(サム)という一人の日本人の体験したことを軸にして書かれているので、とても読みやすい娯楽作品になっています。

時代は日本が国際舞台に進出しようとしていた1900年前後。
混血児として日本に暮らした作夢は、アメリカに渡ったまま行方を絶った父親のと出会うために一人アメリカの桑港(サンフランシスコ)に向かうことに。
なぜ、自分は父親に捨てられ日本で育てられたのか。
農業の研究を深めるために渡米した父親の信吾郎は、現地で知り合ったジョージ・ワシントン博士と出会ったことから医学への道を志したことを知る...

血脈の謎が父親の思想背景と関連してくるあたりは、極上のサスペンスの要素も持ち合わせています。
「人種と文化、文明」、「自由・平等・民主」、「進化と進歩、発展」「存在の階梯」...アメリカに関連して普段語られる事実をこれほどまでに深くかみ締めたことはありません。
力強い理念と優性の思想。
アメリカの持つ崇高な理想と欺瞞をいやになるほど感じます。
アメリカに振り回された1年を締めくくるにふさわしい、とてもすばらしい本に出合えたと思います。

それにしても、作者で情報学者の西垣通氏という人物はどういう人なのだろう?
情報学の教授に極上の小説が書けるというのが不思議。
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2004.12.31 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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