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山流し、さればこそ<br />

諸田 玲子

新しい感覚の時代小説の書き手なのだそうだ。
歴史小説、時代小説に疎い私には何が新しい感覚なのかは正直よくわかりません。
ただ、さわやかにするすると心地よく読めてしまう小説でした。
日ごろ訳文を読むことが多いので、そのせいもあるかもしれませんが。

主人公の矢木沢数馬は、祖父の免職より小普請になった後、自分の力で小普請世話役というささやかな御役につくが、身に覚えのない咎(とが)で山流しとなり出世の道を閉ざされる。
転出を命じられた先は御金蔵破りや天狗や閻魔や青鬼の面をつけた盗賊が横行する甲府。
傷心のまま勝手小普請として代官町の同心長屋に住むことに。
そこは、人生に他人に言えない傷をもったものたちがが寄り合うところ。
それぞれがひと癖もふた癖もある武士。
ここで武陵(富田富五郎)と出会い、本来の人として生きる道を見出すことに。

読み終えてみれば、甲府学問所(徽典館、現在の山梨大学の源流)が創設されたときに教授として迎えられた富田武陵(とみたぶりょう)にまつわる話でした。
武陵の達観した姿勢に感じ入るものはあるものの、ちょっと説明臭い格言の連発が鼻につくところも。
格言ではなく姿かたちで見せてくれればなおよかったのに残念。
そこを矢木沢数馬のキャラクターでうまくフォローしているということでしょうね。

無益に世の仕組みに流されることなく己の進む道を歩む心地よさが残る本でした。
会社に仕えるサラリーマンには癒しになるかも。

この小説は中国の故事、武陵桃源を題材にしたようです。
「晋の時代、武陵の漁夫が道に迷い川を遡ってゆくうちに桃林に迷い込んだ。そこには秦の乱を避けた人々の子孫が平和に暮らす別天地があった。手厚い持て成しを受け、帰宅後再び捜してみたが、二度と訪れることはできなかった。」
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2005.02.27 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |












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