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ダン・ギルモア

パソコン通信のころからネット世界に入り、モザイクの誕生とともにインターネットのホームページ作成に手をつけたのが10年近く前になるでしょうか。5年ほど前にブログが出てきたときにはネットが誰でも使える新しいコミュニケーション手段になるように感じたものです。
インターネットの成長とそれなりにかかわりながら時代をすごしてきたので、そのつどの変化はとらえていたつもりでした。ところが、ジャーナリズムの世界で実際に起こっていることは、想像を超えるドラスティックなもののようです。業界関係者にとっては死活問題にも救世主にもなりうるような出来事ですね。頭でなんとなくわかっているようでわかっていなかったことが徹底的に考察されている本でした。
本書では、ソフトにおけるモザイクやリナックスと同様に、ニュースがオープンソース化することの有益性や可能性が徹底的に論じられています。その一方で、悪意ある情報操作や管理の事例にも著者の筆は及びます。金融が市場経済にゆだねられて久しいように、ジャーナリズムも市場に身をおかないわけにはいかないでしょう。今や市場そのものがジャーナリズム。少なくともネットやジャーナリズムの世界に身をおく人やこれから目指す人には必読の書と言えるのでは。
圧巻なのは、それがジャーナリズムにとどまらない話になってくるところです。ここが本書の評価される所以なのでは。ジャーナリズムのオープンソース化は社会構造や人々の生き方にも影響を及ぼしてくるようです。権利と義務や自由と自制が対であるように、オープンなことは自立をうながしていることも痛感させられました。オープンなことによって得られる可能性、逆に求められることの多さは自由社会そのものです。マクルーハンが言ったとされる、「知識と洞察をふるいにかけて吸い上げる、フィードバックの仕組みが必要」という言葉に共感します。さらに、一個人が時代に対応していく術として、”会話”と”専門性”のスキルを高めたいなどとも感じました。欲を言えば被フィードバック技術としての”編集力”があればいうことないでしょうか。とりあえずは、ブログでのアウトプット力をつけ、RSSを使った情報収集ツールの整備あたりから充実させていければと思います。
読み終えると、単にネットの問題というよりも、政治、経済はもとより文化や人の生き方にまでかかわることが明らかになります。正直、ブログに代表されるネット事情がここまで波及しているとは驚きです。こんなことと関係なく暮らしている人が多いのも現実だと思いますが、生活の土台は間違いなく変化を求められています。20年後、人の生き方が確実に変容していることを確信させられる本でした。
現実を網羅するための事実事例や技術、サイト紹介などの豊富さも特筆される点だと思います。
原題の、We the Media Grassroots Journalism by the People,for the People は、新しい大衆のあり方自体を啓蒙しているようです。日本語タイトルはこの本の思慮深さを表現するには稚拙すぎるようです。

[本▼▼▼▼▽大盛]
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2005.12.18 | 本  | トラックバック(2) | コメント(2) |