FC2ブログ
amazonへ

サラーム パックス

アメリカのイラン攻撃前から現在に至るまで書き続けられている有名なブログを書籍にしたもの。

著者のサラーム・パックスはバグダットに暮らしながら、アメリカにより崩されていくフセイン政権とイラクの人々の生活を書き綴っている。
戦時下にいるものにしかわからない恐怖心が、書き込みのあちらこちらから伝わってくる。
戦争になって始めて胃薬がまったく足りないことに気づいたというような話を読むと、戦争が決して特別の状態ではなく、日常の少しだけ先にあるものだということを痛感させられる。
気持ちを紛らわせるのにアメリカ映画のアイスエイジを見るというあたりも、ちょっと複雑な気持ちになる。
特別ではないからこそ現実として感じられる怖さがこの本の中にはある。
当時、アメリカとイラクのどちらが正しいのかという議論があったが、彼の記録を読む限り、イラク住民にとってはどちらも正しくないというのが正直な気持ちのように感じる。
白黒の決着ではなくて、要はやりようなのだということ。
やりかたを間違えれば、そこには正義も悪もない。
国連もイラクからの亡命者も過去からの関係を考えれば気持ちよく迎え入れられるものではない。
ずっとそこに暮してきた住民の苦悩だけがあふれかえる。
本書を読んで感じたのは、水道や電気などのインフラがダメージを受ける怖さとともに、情報を遮断されることの恐ろしさ。
暗闇の中に裸で放り出されたような恐怖感はその場になってこそ感じられるものだろう。
インターネット全盛の今の時代でなくても、状況を知るための手段が途絶えることによる精神的なダメージは想像を絶する。
すぐ近くから銃口が向けられていたとしてもそれを知る手立てはないのだから。

スポンサーサイト



2005.05.29 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |