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中島 京子

ヴィクトリア朝のイギリス人女性の旅行家の通訳をしたのではと思われる伊藤亀吉の古い日記を見つけたところに物語が始まる。
両者ともに実在した人なのだと思うけど、そこから先はフィクションなのか事実なのか判然としないまま。
当時の日本の生活と現代の日本の生活を対比して恋愛小説にしてしまうあたりは中島さんだからこそ成せる業か。

ただし、現代の物語の中で、昔の文献が入子のように挿入されているという形は、前作と同じ。
ある部分、それがこの人のおもしろさと思ってしまえば、それはそれでもいいのだけど、致命的なのは前作のようなユーモアがまったくないところ。
劇中劇なんていくらでもあるし、入子形式が同じなのは許せるけど、あまりに平坦なストーリーと描写はいかがなものか。
これをさわやかな恋愛物語と評価するのは著者に入れ込みすぎですね。
ただ、中島さんならではの不思議な脱力感は依然魅力的。
期待しすぎてしまうのは、デビュー作の『futon』ができすぎだったせいかも。
amazonのコメントで、バイヤットの『抱擁』を引き合いに出している人がいましたが、あれと比較してもしかたがないのでは。
構造的にはあちらのほうが複雑だし、現代と過去を行き来するというところ以外は別物とみるべきでしょう。
次回作こそ、中島さんの力を抜いた実力発揮作品を期待してます。
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2005.05.12 | 本  | トラックバック(1) | コメント(4) |