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アリステア・マクラウド

現代から回想している分だけ、前2作の短編集より読みやすくなっています。
ただその分、密度は薄められぎみな印象も。
個人的には前作の『冬の犬』が一番好きかな。
スコットランドとカナダの歴史に詳しいと、背景も理解できてさらに楽しめるのかもしれません。
タイトルにもなっている「No great mischief if they fall(彼らが倒れても、たいした損失ではない)」は、ジェームズ・ウルフが「アブラハム平原の戦い」で、かつての敵ハイランダー(スコットランドの高地人)を味方につけフランスに勝利したときに、ハイランダーに対して感じていた思いだそうです。

主人公アレクザンダー・マクドナルドのルーツは、祖父の祖父にあたるキャラム・ルーアとキャサリン・マクファーソン夫婦のカナダへの移住に始まります。
クロウン・キャラム・ルーア(赤毛のキャラムの子供たち)と呼ばれ、200年にわたり広がった子孫と彼ら一族のかたい絆。
6代目にあたる主人公が、スコットランド時代から営々と培われてきた血の繋がりを、現在と過去を行き来しながら語っていきます。
信じ合い、助け合い、そして種族として生き続けること、それこそがこの小説の言いあらわしていることのようです。
「血は水よりも濃し」ですね。
それにしても、ケート・ブレトン島に移民する船を、泳ぎながら追った犬の描写はあまりに美しい。
まさに、この本のテーマでもある、ひたむきに生き、種のための命を全うするかのようです。
いつもながら感じるのは、自然の一部として人の死をこれほど純粋に書けることのすごさ。

今夜は、ハイランドモルトのグレンモーレッジのグラスを傾けながら静かに夜を過ごすことにしよう。

クレスト・ブック
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2005.05.04 | 本  | トラックバック(1) | コメント(4) |