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小林 和之

本書は「人をなぜ殺してはいけないか」さえも明確に説明できない大人が多いという投げかけから始まります。
理由のはっきりしない正義感は意味がない。
著者はしっかりした約束に基づく正義を問う。
事実に沿う「正しさ」ではなく、規範(ルール)に照らした「正しさ」を見極めようとする本です。

氏によると、「正しさ」は人の上にも下にもなく、人と人の間にあり、「正しさ」は人に理解されて始めて「正しさ」となる。
それは強制するものでも服従させられるものでもない。
よくある「悪を駆逐する正義」という考え方も、悪に正義が依存しているという意味において間違いだとする。

欲求としての「正しさ」を比較判断する軸は、進歩や向上するもののほうがより「正しい」という視点に立つ。
また、多くの欲求が「価値」となるが、問題はどの「価値」を優先することが「正しい」の議論であると。
生命より重要なものの存在を認めるためにメタとしての「生命」の「価値」を絶対視する。
さらに、個々人の「価値」は「自由」な状態にあってはじめて明確になり、その価値のぶつかりあいから規範が形成されるという意味において「自由」であることの重要性を唱える。
そして、「生命」と「自由」と「秩序」があらゆる「価値」をささえる特別な「価値」であるという前提に立っている。
論旨が明快であるせいか、読んでいて納得させられるところが多い。
著者の「正しさ」に対する信念を感じさせる。

このあと、「脳死」の問題、「事実」の問題、「過失責任主義」の問題、「不妊治療」の問題、「死刑の問題」、「民主主義の問題」などが次々と斬られる。
法哲学からみた「正しさ」とは何かを改めて考えさせられる本だと思います。

一番感銘したのは、弱いものを踏みつけにしたままでの「正しさ」というくだり。
犠牲の上にある虚構のような「正しさ」に対してどうしようもないむなしさを感じました。
ほんとうの「正しさ」を見失わないようにしたいものです。
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2005.04.14 | 本  | トラックバック(0) | コメント(0) |